誰かのためになるならば、
そう思ってコンビニのレジにある募金箱に五千円を入れてみた
このお金は、私が汗を流して稼いだものだ。
よくよく考えてみると、企業で働く私は社会の歯車の一つとして、いつも誰かの役に立っているはず。
そうやって稼いだお金を、また誰かのために使う。
私はなんて出来た人間なんだろうと、誇らしさを胸にコンビニを後にした。
「すいませーん‼︎」
店を出てすぐに、若い女性の店員が追いかけてきた。
この子はさっき私の会計を済ませてくれた子だ。慌しく走る彼女の右手には五千円札が握られていた。
さらさらと舞う彼女のポニーテールから、ふんわりと甘い香水のような香りが漂った。
「ウチの店、募金したお金は全部店長の懐に入っちゃうんです。せっかく募金しようとしてくれたのに、申し訳ないのでお返しします」
しかし、差し出された五千円札に私は優しく首を振る。
「なら、そのお金はお嬢さんが受け取ってください」
戸惑う女の子を背に、私はクールに立ち去るのだ。
未来ある若者の真摯な振る舞いに、募金した五千円と私の心は見事に救われてしまった。
ならばその救い手である彼女に五千円が与えられるのは、当然の対価である。
断じていうが、決して下心などではない。
7/26/2023, 11:29:43 AM