愛し合う二人を、好きなだけ

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小説
千ゲン



実験に薬草が必要になり、場所を知っていた俺が案内していた時だった。

「...あれ?」

ぽつ、と鼻先に水滴が落ちる。見上げると、空は明るいものの柔らかい雨が降り出していた。

隣では千空ちゃんが俺と同じように空を見上げている。

「狐の嫁入りだ」

「...ただの天気雨だな」

一人言に返ってきたのは現実主義の千空ちゃんらしい回答だった。

「もー千空ちゃん夢がないねぇ」

「あぁ?天気雨に夢も雨もねえだろ」

「全く...ほら、足元」

「...?あ゙?おいゲンてめぇもっと早く言え」

千空ちゃんの足元には探していた薬草がしっかり生えていた。雨水が落ちる度、ここにいるよと言わんばかりに葉がぴょこぴょこ動いている。

「千空ちゃ〜ん、ちょっと視野が狭いんじゃないの〜?」

おちゃらけて言ったその言葉に千空ちゃんはムスッとした顔をする。ちょっと意地悪しすぎたかな?


「……逆にメンタリスト様は視野が広すぎて、目の前がおざなりになってんじゃねえのか?」

「えっ」

気がつけば目の前に千空ちゃんの顔があった。瞬きする間もなく、俺の口は千空ちゃんの口に塞がれていた。

「!?」

「……さっさと集めて帰るぞ」

「...っ...この前まで純情少年だったくせに!」

あっさり形勢逆転された俺は顔が真っ赤になっている自覚をしながらも反撃を試みる。

でも千空ちゃんの顔を見た瞬間、白旗を上げざるを得なくなった。

「……そっちからやったくせに何赤くなってんのさ」


雨はいつの間にか止んでいて、薬草集めは問題なく続けられそうだった。

…いや、やっぱ無理、恥ずかしい!千空ちゃんのばか!!!!

11/7/2024, 3:17:02 AM