月凪あゆむ

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忘れられない、いつまでも

 ──それは、いつだったろう。

 スカートなんて、あなたには似合わないよ。
 あなたは女の子らしい色は似合ってない、もっと地味でいいよ。

 アイツ、キモいんだよね。
 本人に聞こえるだろ、やめとけよ。
 えー? 大丈夫でしょ。鈍いもん。
 
 ──全部、聞こえてる。

 マジで、なんであいつと一緒? ウザいんだけど。
 なんでここにいるんだよ、どっかあっち行け。
 お前なんか、要らないんだよ。


 ──全部、聞こえてるってば!!
「…………!!」
 バッと目が開く。ここはどこか。
 すぐ、自分の部屋のベッドの上だと気づいた。朝の光が窓から部屋に色を入れている。

 ──また、悪夢か。

 きっと、それらを言った人間は、忘れているか、気にもしていないのだろう。
 言われたほうが、かなりダメージを受けているのに。

 朝の光を浴びながら、気持ちをリセット
しようと、考えを巡らす。

 そのままの君で、いいからね。
 ずっと、後悔してたの。やっとまた会えて嬉しかった。
 あなたに、もっと早く出逢えていればよかったね。
 何も言わないのは優しいんじゃなくて、見て見ぬフリをしてたんだよ。
 あなたは、優しすぎるんだよ。
 
 あなたに出逢えて、本当に良かった。

 
「ふぅ……。よし、大丈夫!」
 気持ちを切り替えて、今日も生きよう。

 
 
 きっと、あの「悪夢」を完全に忘れ去ることはできない。
 きっと、いつまでも。
 でも私には、私を大切に想ってくれるひと達がいる。
 出逢いを、喜んでくれるひとがいる。
 それを、なんども思い出す。
 
 忘れるには、あまりにも褒美な言葉たち。
 そうして、傷も涙も、喜びも抱えて。
 私たちは。今日を生きていくんだ。
 

5/9/2023, 11:08:16 AM