鏡の向こうに、幸せな世界を見た。姿見に映る自分は眠たげな目をして身支度を整え、その後ろでは彼女が忙しなく準備を整えている。ありきたりな日々の一コマ。けれどそれが、今は何より煌めいて見える。爪が食い込むほど強く手を握り締め、唇を噛んで視線を逸らす。これ以上は見ていたくない。有り得たかもしれないもしもの世界など、心の傷を抉るだけで、慰めにもならないのだから。
9/27/2025, 9:26:48 AM