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♯君と


 気づいたときには公園を出ていた。
 あれ? いつのまに?
 困惑して立ち尽くす僕をよそに、「どうしたの?」と君はこてんと首を傾げる。ゆるやかに波を打つ髪がふんわりと揺れた。
 いや何でもないよと、僕は動揺を押し込めて笑顔を作る。
 好きな人と一緒にいると、時間が短く感じるという。
 なるほど、これは早い――僕は照れ臭さを覚えながら、白磁のようにすべらかな君の手をそっと握った。
 さあ、次は映画館だ。

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 ……ん?

 僕は目を瞬かせる。
 気づいたときには映画館を出ていた。
 あれ? いつのまに?
 愕然とする僕の隣で、「どうしたの?」と君は女神のように優しく微笑んでいる。
 なんだか君といると、あっという間に時間が過ぎるんだ。
 半ば混乱しながら僕は話す。比喩でもなんでもなかった。
 君は含羞むわけでもなく。戸惑うわけでもなく。怪しむわけでもなく。くりくりとした目に興味深そうな光を宿して、

「だったら、どうするの?」

4/4/2025, 4:49:08 AM