最高気温の数字ばっかり追っていると、いつまでたっても秋にならないように思う今日このごろ。
それでもお題が「秋の訪れ」だそうなので、こんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。都内某所某稲荷神社の敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
そのうち末っ子の子狐は、丁度前回投稿分のおはなしの舞台、領事館で、ポン!ぷすぷす。
1台の自走式草刈機を、覚えたての狐の秘術によって、黒焦げにしたところ。
特に長期間燃えるでも、熱を出すでもなかったので、それじゃお芋も焼けません。
コンコン子狐は焼き芋が食べたくなりましたので、
稲荷神社のおうちに帰って、焼き芋パーティーをすることに決めたのでした。
段々、サツマイモやマロン系の商品が、スイーツの棚に増えてきた昨今です。これぞ秋の訪れです。
コンコン子狐も秋の訪れを、焼き芋によって享受しようと考えたのです。
稲荷子狐がおうちに帰ると、おやおや?
黒焦げにした草刈機が走ってた土地の人ではなく、
その土地の人が敵視してる方の組織の人……
もとい、オネェ宇宙タコさんが、
子狐のおばあちゃんと一緒にコーヒーなど飲みながら、楽しそうに、たまに申し訳なさそうに、2匹しておしゃべりしています。
なんでも機能、上質なコーヒーがたくさん、オネェの職場のオネェの部署に、寄贈されたそうです。
「おやおや。噂をしていれば」
おばあちゃん狐が言いました。
「聞いたよ。管理局の法務部が領事館にこっそり潜入させてた草刈り機、焦がしてきたんだって?」
本当に、ほんとうに、お前はこのおばーばの、若い頃のやんちゃっぷりにそっくりだ。
おばあちゃん狐は子狐を、何度も何度も撫でてやって、そして、ポン。背中を押しました。
「向こうで遊んでおいで。
おばーばはこれから、このタコとお話があるから」
ところでオネェの宇宙タコ、なにか人間は見ちゃいけないような、どこからともなくダイスが飛んでくるようなタイプのオネェなのか、
ぬちぬち足の周囲から、みょっみょ!
ツタと茎と葉っぱとで陽気にダンスしているダンシング草が複数本、生えています。
ダンシング草のカラーリングを、よくよく子狐が見てみますと、あらあらまぁまぁ。
茶色に黄色、紫色に黒にオレンジと、明確に、ド直球に、秋をイメージしています。
お題と雰囲気が読める、有能なダンシング草です。
みょっみょっみょ、みょんみょん。
みょみょみょんみょん、みょっみょ。
秋カラーのダンシング草は、オネェ宇宙タコの周囲で妙な音を発しながら、容器に踊っておりました。
これも多分、秋の訪れです。
いつか「冬の訪れ」なんてお題が来たら、オネェ宇宙タコの足元から生えるダンシング草は、
きっとアイスブルーやら白やらに変わるでしょう。
子狐はダンシング草に構わず、自宅兼宿坊の座敷に、とってって、ちってって。行ってしまいました。
なにやら良い香りがするのです。お座敷の方で、誰かがサツマイモスイーツを、熱しておるのです。
「おいもさん、おいもさん!」
子狐が座敷のふすまを開けますと、案の定、
オネェ宇宙タコの部下であるところの、普通の人間の男性が——前回投稿分の自走式草刈機の持ち主が、
おいしそうなスイートポテトと一緒に、子狐を待っておりました。
「やぁ、子狐」
普通の人間男性、「ツバメ」というビジネスネームの世界線管理局員が、子狐に言いました。
「先日、お前が焦がした自走式の草刈り機が、実は私が領事館に潜入させてたロボットでね。
それをまさか、ピンポイントで焦がされたとは」
私達はその事情を説明しに来たんだ。
ツバメはいろいろ言いますが、コンコン子狐、気にしちゃいません。それより秋の恵みです。
「おいしい。おいしい」
「そうかい」
「おいもさん、おいしい」
「そりゃ良かった。
なぁ子狐、できれば領事館の機械を壊すときは、事前に私達管理局が潜入させたものかどうか、確認を取って、領事館のものと判明してから」
「おかわり。おいもさん、おかわり」
「ハナシを聞いておくれ子狐」
もぐもぐ、ちゃむちゃむ。子狐は大人の事情なんて、知ったこっちゃありません。
秋の訪れの象徴たるスイートポテトを、大いに、幸福に、いっぱい堪能しましたとさ。
10/2/2025, 9:43:09 AM