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夫婦

長らく、妻が夫を支え、その結婚生活で不貞をはたらいても夫の場合は甲斐性で妻の場合は刑事処罰であり、不貞の子を抱えて浜辺を歩くのは妻であったが、今は妻が不貞で産んだ子を自分の子と信じて愛しはじめた夫が子を抱いて泣きながら浜辺を歩く…。

男は随分と女々しくなった。

僕のことをからかったの?
そんなにアイツが好いの?
僕はもう要らない?

君のシグナル見逃していた?
お互い様じゃないの?
僕を責めるの?自分をせめるふりして

それでも構わない君のシグナルもう一度
気まぐれかな?それでも構わない
君と君の子と家族でいたいから

愛情って何かな?ただ欲しい
愛が欲しい?君と居たいから
嘘でも、どうぞ構わない

その子を、僕の子だと騙し続けてくれ
辿り着いた世界はもう、惚れた妬んだを越えて
ただ、女々しく君といたいだけ

そんな事を、男に言わせておけば
男女平等のフェミニズムの世界なのか?
それで時代は前に進んだのか?
肩肘張った女が男になっただけという気が
しませんか?阿久悠様。

せめて、少しは格好つけて
行ったきり幸せになるが良いと背中に言ってくれ、落ちて行くのも幸せだよと涙見せずに行ってくれ…。

先輩たちは、男も女も潔かった。

夫婦の愛情物語も、言葉の行間にその愛を感じ二人の人生を人間像を想像させます。

見た目とは裏腹な多面的な人間の物語は常に濃く湿っぽくもあり渇いていて軽く、軽薄さに傷つきながら重い重厚さで傷つける。けれど優しくありたいと偏った優しさで傷つける者が傷つけたものを、強さで癒す者がいた。
そんな物語があった。

結婚記念日

若くして妻を、亡くした男がいた。
再婚の話を持ちかけられるが、自分は二度と結婚しようとは思っていない。

妻のことを、愛しいとも美しいとも思ったことはなかった。彼女は無骨な職人の家で育ったため、品というものもなかった。そんな妻との結婚生活は、慎ましくも地味であった。

或夜、再婚話を持ちかけに来た友人を見送り、男は妻との、楽しかったような楽しくなかったような箱根旅行を思い出していた。その思い出すやりとりが何とも可笑しく、悲しく、愛しい。いつも、隣にいる人間が、どうしょうもなく大切に思える瞬間、「彼女はもうこの世にいないのだ」という喪失感を与えるのだ… あれが、愛情でなくなんであったのか?と男は冷たい妻の何ものにも替えがたい、いじらし生きものの身体を自分の体温で温めた日を追想するのであった。

井上靖 「愛」

11月22日 いい夫婦の日に寄せて。


                心幸 
追記 友がみな 我より偉く 
   見ゆる日よ 
   花を買いきて 妻と親しむ

   石川啄木 「一握の砂」

妻でも夫でも構わない、外には7人の敵がいる中背中合わせで戦って行くのが夫婦だが、また向かい合って癒し合える日も来る、その時間こそがかけがえのないもの、夫婦愛である、男と女は互いに無いものを愛しみ合えるから夫婦になる、ライバルでも敵でもない同志なのでありたい。






11/22/2024, 2:33:27 PM