心の片隅で
あいつの晴れ姿は輝いていた。
とことん盛り上げてやるぞとさんざん息巻いていた俺たちも、いざ新郎新婦を前にするとただただ嬉しくなってしまって、やけに神妙に背筋を伸ばして拍手を送る。近いようで遠い場所。壇上で誓いを立てるあいつは、また一歩先へと進んでしまった。
「おめでとう」
心から言った。あいつはありがとうと答えてはにかむ。その表情があまりにも新鮮で虚をつかれる。10年来の付き合いでも見たことがない表情。あいつもあんな顔するのかという月並みな感想が浮かび、心の片隅へと流れ込んでいく。その先には何かがいて、もぞもぞと心を食べている。めでたいが好物のそれは、ゆっくりと、けれど確実に成長を続けている。
「あいつは親友……その、昔からの友人でして」
こちらの話をしているのが聞こえる。
俺は気づかないふりをして、そっとグラスに手を伸ばした。
12/18/2025, 3:17:34 PM