前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこではいろんな境遇、いろんな種族、いろんな世界出身の者たちが、仕事をしておりました。
前回投稿分では、大きなモフモフネコモドキが本性の管理局員、ビジネスネーム「スフィンクス」が、
大親友のドワーフホトにヤキモチ焼きまして、仕返しとばかりにナデナデとブラッシングを要求。
本性がモッフモフネコドラゴンモドキのスフィンクスは、丁度換毛期でしたので、
どっさり、ふかふかモフモフの毛がとれました。
ところで世には猫毛フェルトなる物があるそうで。
「ふんふんふーん、ふんふふふーん」
スフィンクス1匹分もあろうかという抜け毛をじゃぶじゃぶ、丹念に洗って消毒して、乾燥させて、
ドワーフホトはそれを使って、魔法のアロマが香るフェルトチャームを作ります。
「ふーんふんふん、ふふんふーん」
乾燥したスフィンクスの過去形を、様々な色に染め直して、それぞれの用途ごとのアロマに浸して、
ドワーフホトは、いろんな色のモノクロの、フェルトチャームを作ります。
黒のモノクロ、青のモノクロ、ピンクのモノクロにペールグリーンのモノクロ、等々。
スフィンクスの抜け毛は神秘の抜け毛。不思議なチカラが残っておるので、魔法のアロマの効力を少し、長持ちさせてくれるのです。
ところでその抜け毛の元々の持ち主はと言うと。
「…——ってことで、俺様もホトにヤキモチを、是非、ぜひ、焼いてみてほしいってワケよ」
「はぁ。それは、ご苦労なことだな」
ブラッシングしてもらってスッキリしたスフィンクスは、人間形態に化けまして、
それで、ドワーフホトが前々回の投稿分で仲良く料理をして(そしてスフィンクスを嫉妬させて)おった、ルリビタキの部屋に来ておりました。
「ドワーフホトにヤキモチを焼かせたいのは分かったが、それと俺の部屋に来るのはどう関係が?」
「お前の部下のツバメもお前にヤキモチする」
「はぁ」
「よく考えてみろよ。お前と仲良しのツバメが、自分を放ったらかして、俺様と仲良くしてる。
アイツは確実に妬くぜぇ。ヒヒヒ」
「そうか。よく分からん」
「よーく考えてみろ。想像するんだ」
いまいち状況を飲み込めないルリビタキに、スフィンクス、人差し指を立てて言いました。
「お前だってそうだろう?
俺様と、お前の大事な大事な部下のツバメが、お前を差し置いて、一緒に楽しくしてる。妬くだろ」
「お前と、ツバメが?」
ルリビタキはスフィンクスに言われたとおり、頭の中で想像しました。「ふむ?」
モノクロなんだかセピアなんだか、ちょっとカラーが混じってるんだか、
ともかく舞台を用意して、スフィンクスとツバメを配置して、2人に両手を繋がせて、ルンルンスキップのく〜るくる。楽しそうです。
そして離れた場所に、ルリビタキ自身を置きます。
「ツバメが楽しいのは、良いことだ」
「もっとよく考えろよ。なんで自分を放っぽったんだ、って思うだろ?なぁ?」
ルリビタキはスフィンクスに言われたとおり、頭の中で、もっとよく想像しました。「ふむ」
モノクロだかセピアだかの舞台でルリビタキの部下は、スフィンクスと更に楽しそうに——ダイナミックに、ルンルンスキップのくーるくる。
それを、ルリビタキ自身が見ています。
「ツバメが楽しそうにしている。良いことだ」
「もっとだ!もっと、幸福そうに!楽しそうに!」
ルリビタキがあんまり鈍感なので、スフィンクスは彼の、両肩を掴み、彼の両目を見つめます。
「もっ……と?」
ルリビタキはもっともっと、モノクロだかセピアだかの舞台のツバメとスフィンクスを、
アグレッシブに、ダイナミックに、エネルギッシュに、ルンルンさせて、ぐるんぐるん!
人間の身には危険なくらい、動かしました。
スフィンクスは人外なので、頭の中のモノクロ舞台のスフィンクスも、楽しそうです。
ツバメは普通に人間なので、頭の中のモノクロ舞台のツバメは、楽しそうですがとても危険です。
「スフィンクス」
ルリビタキは言いました。
「ツバメをいじめるな」
スフィンクスは「はぁ?」と首を傾けて、
完全に、目が点になっておったとさ。おしまい。
9/30/2025, 6:25:18 AM