架空体

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【夏草】
夏の終わり、道端に生い茂る草むらに足を止めた。
汗ばんだ風に揺れる葉は、誰に見られるでもなく青々と伸びている。

毎朝、同じ通学路を歩くのに、今日だけはその存在がやけに目に入った。
受験の不安や人間関係のもつれで胸が重くなると、心は遠くへ逃げてしまう。
けれど、夏草は逃げない。ただそこに、黙って立ち続けている。

強さとは、大声で主張することではないのかもしれない。
何も言わず、ただ生き抜くこと。
その姿に気づいたとき、自分の中の小さな焦りも、ほんの少し和らいだ。

来年の夏、この草はもう枯れているだろう。
けれどその生命を見つめた記憶は、きっと私の中に残る。

――夏草の青さは、儚さを知っているからこそ、まぶしいのだ。

8/28/2025, 2:42:41 PM