いぐあな

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ファンタジー
300字小説

思いは遠く、でも確かに

 昔、古より湧く、この山脈の邪気が、一時的に途絶えた時があった。
 ずっと邪気の生み出す魔物と戦ってきた聖竜の俺には束の間の休息だったが、人にとっては森を切り開き、開墾し、新たな村をつくり、それが街になり、山脈を越える為の都市になるほどの時間だった。
「再び、邪気が湧き出し、人は、この地を捨てざるえなくなって去ったがな」
 俺を称える為に、都市に人が造った神殿を背に魔物を切り裂く。
 以前はただ神に与えられた役目として戦ってきただけだが。
「あれ以来、俺にも心の拠り所ってやつが生まれたのさ」
 山の向こう、遠くに村と町、都市の灯り。この地に生き、去った人の血を引く者達が暮らす場所。
 雄叫びを一つ。俺はにっと牙を剥いた。

お題「束の間の休息」

10/8/2023, 10:37:48 AM