拝復
春の気配がほのかに風に乗っているように感じられる頃となりました。
ただひとつ貴方からの文を待つ時間だけは春や夏など、ましてや暑さ寒さも感じない不思議な時間となっております。
夜更けの灯りのもとで綴られたのであろう貴方の言葉は、どこか春のような温度を帯びていて、読み進めるほどに貴方の優しさを今日の風のように感じます。
恐ろしいものの話でございますか。
貴方のお言葉通り、普段道化のように振る舞っている私にもいくつか不安や恐れがございます。それは時に昼の明るささえも飲み込むほど大きな影となり、時折私もその影に飲み込まれております。
貴方は意地とおっしゃいましたが、意地を張っているつもりはそこまでないのですよ。ただ私はいわば笑顔の仮面を常日頃かぶって生きております故、その仮面を外さぬように影の中でもがく姿が貴方には意地に見えたのかもしれません。
本当に怖いのは影ではございません。影の中で素顔となった私を前に皆がどのような仮面を被り私を見るかなのです。
私はいわば月でございます。貴方という太陽がなければ輝くことはできぬのです。しかし時に訪れる太陽が休む夜には、貴方が再び空に戻るまで私が静かな光を落としましょう。
貴方の文に心を温められたお礼を、まずはお伝えしたく筆をとりました。
また貴方の言葉が届く日を、静かに楽しみにしております。
草々
3/16/2026, 12:20:34 PM