Ayumu

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 ぎゅー。
「お、なんだ?」
 伝われ、伝われ……!
「まったく、人肌恋しくでもなったのか? お前は昔から寂しがり屋だったもんな」
 ぽんぽん、と頭に優しい衝撃が二、三度走ったところで、諦めて離れる。
「……ばか」
 なんだよ、とやっぱりなにもわかっていない従兄を置いて、部屋に逃げる。
 今日もだめだった。会うたびにああして溢れる気持ちを込めても、彼には一ミリも伝わっていない。
 女の色気が足りないの? 妹属性とかいうのがまだまだ強いの? いっそキスでもしてみたら意識だけはしてくれる?
 自分をきつく抱きしめる。頭に浮かんだのは戸惑いながら下手な言い訳を続ける従兄の姿しかなかった。
 今のままじゃ捨て身の突撃をしたところで未来は変えられない。うまく立ち回ることも、さりげない台詞をつぶやくこともできないから、思いきり抱きしめるの。
 いっそ「むしろ気持ちがわかっているから、ああして躱すしかできない」だったらまだ、望みはあるのに。


お題:溢れる気持ち

2/5/2023, 3:51:34 PM