蓼 つづみ

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世界には
そっと
音量をミュートにしたような想いが
犇めいている。

例えば、
星座の話をする人の
瞳の光を見て
ああ
このままでいてくれたらいいと
胸の奥で想うだけ。

近づこうとはしない。
掴もうともしない。

ただ
同じ空気のなかに
ほんの少し
立っている。

その人が笑う。
それだけで
体温が
少し上がる。

例えば、
知性に惹かれる想いは、
ときどき
一枚の鏡を差し出してくる。

その人の見ている景色に
自分は
届くのだろうか。

その問いが
胸の奥で
小さく鳴る。

想いは、
告げられない。
ミュートのまま
世界に置かれていく。

踏み出せば
水面に波紋が立つことを
知っているからだ。

静かな想いは
世界を乱さない。

代わりに
世界を少しだけ
あたたかくする。

誰にも知られないまま
誰にも奪われないまま
誰かの幸福を
遠くから願っている。

本当は世界は
こういう想いで
できている。

きっと
あなたの知らない場所でも
誰かが
そんなふうに
あなたを
静かに想っている。

声はない。
でも
確かに
そこにある。

題 星が溢れる

3/15/2026, 11:13:59 AM