陽月 火鎌

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昔、この国に英雄と呼ばれた人間がいた。
しかし、どの文献にも英雄自身についての記録がなかった。あるのはただ、英雄がいたということと、英雄に救われた街や村々に記録があるのみ。英雄の名も、姿も分からない。

そう思われていた。
英雄の名前が分かったのは、偶然だったのかもしれない。
この国の王女殿下が隣国の王族と交流中、星座の話になった。その時、こんな話題が出た。

「昔に活躍した、ある国の英雄が星座になった」

王女殿下は、ハッとしたらしい。それは、この国の英雄なのではないかと。そう思った王女殿下は、星座の名前を聞き出した。

⸺フェルメダ座。
王女殿下は過去の文献や記録などを調べ、分かったことがあった。英雄が活躍した後、フェルメダという名が多く名前として使われていたこと。そして今でも村々の多くで定番の名前であることを。



「オ…オレの名前、そんなソーダイだったのか!?」
「……いや?ただそんな話があったら面白いだろうと思ってな」
「つまり作り話かよ!?おどろいてソンした…オレもう帰っから、バーさんも暗くなる前に帰れよ?」
「おぉ。またのフェルメダ。明日もまた占ってやるか?」
「いらねーよ!バーさんの占いってあんま当たんねーし。じゃあなー!」
「………作り話でも”未来の”なんだけどの」

【いつか彼は英雄に…なるかもしれない】

10/5/2024, 2:32:43 PM