ふと君から漂う風が 僕の鼻を通り越して消えていく
不自然に止まった僕を見て 君は可笑しそうに笑いだした
なんでもないよと誤魔化して 前を歩き出した君の背を追う
いつの間にショートにしたの 僕 君の長い髪が綺麗だと思ってたんだよ
いつの間にオシャレなんかしだしたの いつも僕とダサイって言い合ってたくせに
いつの間にメイクなんかしだしたの 大人になってからでいいって そう言ってたじゃないか
伸ばした手はとうに届かなくて ずっと先を行く背中を 僕は目で追っているだけ
手を伸ばそうとしたのも 君をちゃんと見ようとしたのも 些細な変化に気付けなかったのも 自分に正直になれなかったことも
並べてみれば大層な違いはなくて 全部いい加減な僕のせいだね
ふと漂った香水が 僕の鼻を掠って 止めきれないで消えていく
君の隣にいるのは もう僕じゃないのに
【知らなければよかった】———『香水』
8/30/2024, 12:05:28 PM