真っ青に晴れた空。わきたつ入道雲。
この空をバックに、ひまわり畑の真ん中で立つ君の姿を収めた写真が、僕の部屋の本棚に飾られている。
僕は君と二人で写真を取らなかったことを、写真を見るたびに後悔している。
写真嫌いの君が唯一取らせてくれた写真が、君との最後の思い出になるなんて、思ってもいなかった。
読むことが大好きだった、君が残していった本の数々。
君をもっと感じたくて、本棚から引っ張り出して開いてみたけどとても難解で、読むことが出来なかった。
だけどその本が並んでいる本棚がそっくり残され、出ていったままの君の部屋を見るたびに、僕は君の気配を感じて、まるで君がそばにいるように感じるんだ。
あの日。
僕と君がめったにしない喧嘩をしたあと、売り言葉に買い言葉で、君はこの部屋を出て行った。よほど怒っていたのか、それきりこの部屋には戻ってこなかった。
君が僕を置いて家から出ていったのに、僕はみっともなく君の残していったもの、住んでいた部屋ををずっとそっくりそのままにしている。
いつでも、戻ってこれるように。
たとえ周りの人が『もう帰って来ることはない』とさとしても、『もう、忘れなよ』と言って来るけど、僕は信じない。
君が僕を許してくれるなら、きっとここに戻ってきてくれるから。
お題:夏、入道雲
6/30/2023, 9:07:53 AM