夜の祝福あれ

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どこまでも

風が吹いていた。
それは、まるで彼女の背中を押すような、優しくも力強い風だった。

高校を卒業したばかりの遥(はるか)は、駅のホームに立っていた。手には小さなリュックひとつ。行き先は決めていない。ただ「どこか遠くへ行きたい」とだけ思っていた。

「どこまでも行ける気がする」
そう呟いたのは、卒業式の帰り道、親友の紬(つむぎ)だった。

「私たち、何にでもなれるよね」
「うん。どこまでも行けるよ」

その言葉が、遥の胸にずっと残っていた。

電車が来た。遥は一歩踏み出す。
窓の外に流れる景色は、見慣れた街から、知らない町へと変わっていく。
彼女はスマホを開き、紬にメッセージを送った。

「今、出発したよ。どこまでも行ってみる」

返信はすぐに来た。
「私も、今から出発する。どこかで会おうね」

遥は笑った。
目的地なんていらない。
大切なのは、進むこと。
そして、誰かとその旅を分かち合うこと。

電車は、どこまでも走っていく。
遥の心も、どこまでも広がっていく。

お題♯どこまでも

10/13/2025, 8:53:02 AM