ゆり

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特別になりたかった。
1番になりたかった。
かけがえのない存在になりたい。貴方にとっての宝物になりたかった。たとえ私が貴方にこの上ないくらい愛情を注いだとしても、
ぎゅっと力いっぱい抱きしめたとしても、私は貴方の記憶という川の泡となって消える刹那的な存在でしかないのだ。
私は貴方の特別にはなれなかった。

「別れたくないよ。」

感情的になってはいけない。分かっていた。分かってる。自分が一番分かっている。
真っ白なシャツが瞬時に真っ赤に染まった。ポタポタと赤い液をたらし、貴方は頬を濡らしながら必死に何かを訴えていた。ごめんなさい。
赤く染った包丁を垂直に向けた。これが私が貴方に贈る、最初で最後の花束。

動かなくなった貴方を横目に私は自分自身に真っ赤な刃物を向けた。

私で終わらせたかった。
貴方にとっての特別を私で終わらせたかった。最期まで特別でいたかった。

3/24/2023, 3:58:37 AM