イオリ

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忘れたくても忘れられない

大学からの帰り。駅を降りてすぐ隣の駅で夕食の弁当を買って家まで歩く。なかなか大きな住宅街で、駅からは、赤の地面の広くて立派な遊歩道が付されていた。

夕方、同じように帰宅中の人が何人もいた。スーツのおじさん、小学生、スーパーの袋を下げたおばさん、女子高生は携帯電話をいじりながら歩いていた。

僕も歩いた。その日は朝が早かったから疲れもあって、早くベッドに横になりたかった。

ただ、歩いた。視線を下げて、赤い地面を見ながら。

ふと、顔を上げた。前を歩く人たち。彼らもただひたすら歩いていた。誰一人、こちらに向きを変えることもなく、振り返ることすらなく、前だけを見て歩いていた。

こいつら、まるで蟻の行列だな。そう思った。

だが、すぐにハッとした。慌てて後ろを振り返った。あとには、同じように歩く人たちがたくさん続いていた。

なんだよ、俺もただの蟻だったのかよ。

自分はあんなふうにはならない。そう思って生きていたけど、いつの間にか同じになっていた。

もしあの時、後ろを振り返っていなかったら、勘違いの傲慢さを抱えながら、今も生きていたかもしれない。

己の恥を思い返すあの遊歩道。忘れたくても忘れられない光景です。

10/17/2024, 10:21:02 PM