特に特徴がない服を着て、いつも笑みをたたえたような穏やかな顔をしていた。滅多に感情を乱すこともない。淡々という言葉がぴったりの人だった。まとう空気がいつも半透明な感じだった。
生きていくために必要最低限の欲を淡々とこなしている。そんなふうに見えていた。
会わなくなってしばらく経ったころ、今は別人のようだという。封印していた色々なことを解放したのだそうだ。人生の大きなイベントを、急いでこなしていっていた。ああ、あらゆる欲を解禁したんだと思った。きっとまとう空気も、はっきりとした確かな色になっているのだろう。
「欲望」
3/2/2026, 6:55:19 AM