ミヤ

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"透明な羽根"

透かし彫りを施されたランタンに火を灯すと、
光で編まれた羽根が無数に中空を舞った。
重さの無い羽根は軽やかに室内を踊り、
翳した手に光の痕を映し出す。
捕まえられない、羽根の形をした光の影。
それら全てに歪みが無いか、欠けが無いかを確認し、頷きをひとつ。
同時に背後から、上出来だ、と工房主の満足気な声が聞こえた。


"しっかし、お前さんも大概だねぇ。
プレゼントを手作りする為だけに一から弟子入りするとは。あっという間に技術を盗んでいきやがって、羨ましいこった "

いつでもここで雇ってやるんだがなぁ、と残念そうに言う親方に、すみません、と頭を下げる。
働くつもりもないのに技術だけ教えて欲しいだなんて、図々しいと怒って叩き出されても文句は言えない。それを豪快に笑って是としてくれたのだから、本当に頭が下がる思いだ。
たまにはバイトしに来てくれよ、と言って笑う親方に深く礼をして、数ヶ月間通い詰めた工房を後にした。

出来上がったランタンを落とさないように大事に大事に胸の前で抱える。
喜んでくれるといいなぁ、と思いながら、
抑えきれずに、ルン、と一歩分だけ弾むようにステップを踏んだ。

11/9/2025, 3:00:42 AM