小絲さなこ

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「ふたりきりのフォークダンス」



文化祭というものには、ジンクスがつきものだ。
後夜祭で花火やフォークダンスをする学校なら尚更。
花火をふたりきりで見ると結ばれる、だとか。
フォークダンスで手を繋いだ人とは深い仲になる、だとか。
フォークダンスをふたりきりで踊ると結婚する、だとか。
まぁ、そんなありがちなジンクスが、我が校にもあるわけだ。

「ていうかさー、花火をふたりきりで見ること自体、脈アリってことじゃね?」
「まぁね」


今、俺は彼女と教室に向かっている。
最後の文化祭である今年、ふたりきりで花火を見ようと誘ったのだ。

ずっと、ずっと保育園児の頃から好きだった女の子。
今も変わらず俺の側にいてくれるなんて、これを奇跡や運命と言わずして何と言うのだろう。

一昨年は照れて誘うことが出来なかった。
昨年は色々と邪魔が入り、花火を見ることは出来なかったが、その代わりお互いの気持ちが同じだとわかったから結果オーライだ。

ちょうど教室に着いたそのとき、校庭からフォークダンスの開始を告げるアナウンスが聞こえてきた。

「ちょっと早かったんじゃない?」

花火は後夜祭の最後だ。

「いや、ちょうどいい」

そう言って、跪く。
目を見開く彼女に、手を差し出した。



────踊りませんか?

10/5/2024, 3:06:26 AM