「君と私は赤い糸で結ばれてるんだよ。」
そう言って小指を立てた。ずるい私でごめんね。
「何で運命の糸は、赤なんだろうね。」
私が聞くと彼は、悪戯っぽく笑った。
「それはね。血の色だからだよ。」
彼は私を驚かそうとしたのだろうか。しかし、逆効果だ。いつだって私を楽しませてくれる彼が、とても愛おしい。
「血の色って、何だか呪いみたい。」
「確かに。」
二人で笑った。こんな幸せな日々は、長く続かないのに。
「ごめんね。駄目な彼女で。」
私は最後の力を振り絞って、彼の手を握った。投薬で浮腫んだ手を、彼は強く握り返してきた。もう時期、私は死ぬのだろう。前々から分かっていた事なのに、こんなにも怖いなんて。
「大丈夫。俺はずっと傍にいるよ。」
彼は笑顔で言ってくれた。しかし、目元が赤くなっている。私に気遣ってくれたのだろう。
「ありがとう。じゃあ、一つお願いしていい?」
彼は頷いた。きっとこれは、彼の人生を邪魔する最悪の願いだ。それでも、最後ぐらい我儘な呪いをかけさせてね。
「私以外と、結ばれないでね。君と私は赤い糸で結ばれてるんだから。」
彼は驚いた顔を見せた。しかし、笑顔で言ってくれた。
「俺には君だけだよ。だから君も、天国で浮気したら駄目だよ。」
二人で笑った。二人を結ぶ赤い糸。私は願う。糸が切れないように、ただ願う。
6/30/2024, 1:10:40 PM