ストック1

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運命の赤い糸
愛し合う二人の繋がりを例えた言葉
だけど、私たちは運命の黒い糸で繋がっている
私はあいつを利用し、あいつは私を利用する
私たちは利害が一致している限り、お互いを絶対に裏切らない
関係性が明確な分、下手な愛や友情なんかよりも圧倒的に信頼できる
そもそも、曖昧で、知らない内に移り変わるような心なんてものを信頼するなんて、リスクが大きすぎる
相手がいつ裏切るか、もしくは、いつ相手が私に裏切られたと思い込むか、わかったものではない
なら、利益で動く相手と、利益のみの関係を持つほうが安心できる
そう、相手は利益で動く存在
そう思っていたのに
恋人ができたそうだ
あいつは今の仕事から足を洗うと宣言し、私の前から姿を消した
追うこともできるけど、無駄なのでしなかった
それに、相手が利益ではなく気持ちで動くようになったら、私はそんなやつを信頼できない
また利害の合う、心で動かない相手を探さないと
でも、あいつは幸せそうだったな
私は今、幸せなのだろうか
もう、幸せだとか、嬉しいだとか、そんな感情はわからなくなってしまった
いつからだろう、こんなふうになったのは
そんなことが頭を巡って、気づいたら涙を流していた
そうだ、思い出した
私は、本当はこんなことをしたかったわけじゃない
いつの間にか忘れていたけど、私だって、心で信頼できる相手が欲しかったんだ
でも、他人を信頼して生きていけるような環境じゃなかった
だから、自分の利用価値で相手を判断し、信頼するようになった
私はどうするべきだったのだろう
私は、今からでもやり直せるのだろうか
失くした感情を取り戻せるのだろうか
そんなことを考えていたら、私の中で何かが少しずつ変わり始めた
やっぱり、このままでいるのは嫌だ
私はこの黒い糸を断ち切って、光の射す方へ歩いていきたい
私自身を変えるために、一歩を踏み出す
恋人ができたあいつにも可能なことなら、私にだってできるはず

6/18/2025, 11:35:47 AM