ひろ

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「この満天の星空を君に捧げる」

僕には、4人の親友がいる。いや、いたんだ。
今は3人になってしまった。
その内の一人のお話

田舎の高校を卒業して、都会の学校へ進学した僕は、その下宿先で彼と出会った。彼とはギターで仲良くなり、下宿の中で良くみんなに聞かせたものだ。
当時、尾崎豊を崇拝していた私は、「15の夜」が大好きで、洗脳する如く、当然、毎日彼に弾いて聞かせていた。

🎵盗んだバイクで走り出す 行き先もわからぬまま🎵

洗脳の結果か?彼はバイクを買った。
僕もバイクも買った。

夜になると、次の日の事も考えず、ただバイクを走らせていた。
夜の街、峠、海、彼と並んで一緒に走る。ただそれだけが楽しかった。

彼と必ず、晴れた夜にやったことがある。
バイクで街を流して、いつもの自販機の前にバイクを並べ、そこの温かい缶コーヒーを買って、乾杯し、空を見上げる事だ。

互いに違う場所で生まれ育ち、今、この場所で同じ空を見る。
何も語らなくてもいい。ただ共にいるだけで。

彼が、この世を去った今、僕の、何かがずーと欠けている。
もう一度だけ、あの夜に戻りたい。

不思議と今現在、あの時の街に僕は住んでいる。
あの時の自販機は今はもうない。

「僕は、今日も、ひとりきりだな」

ブラックコーヒー片手に、僕は空を見上げた

「この満天の星空を君に捧げる」

背中と背中で語った、あの時を懐かしみながら、
今日という日が、また、ひとつ、終わるのだった。





9/11/2025, 2:17:24 PM