バスクララ

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自分ではよくわからないが、我が家は居心地が良いらしい。それもとてつもなく。
実家のような安心感という冗談がネット上で溢れかえっているが、友達、しかも複数人から超イイ笑顔でそれを言われた時には思わず私は真顔になった。
自分ちはよくある普通の家なのに……と思っていたからだ。
そして誰かが我が家を『魔性の家』と呼び始め、いつしかそれが通称になってしまった。
さて、その魔性の家にて熱心に本を読んでいる女友達が一人。
しかもその本は先日発売されたばかりのミステリー本。
自分の家で読めばいいのに「魔性の家の方が集中できるから」とわざわざうちに来て黙々と読んでいる。
なんだかなあと思いつつ有り合わせのお菓子とジュースを出すも友達は集中しているのか気づきもしない。
読了するまでに時間がかかるだろうと踏んで、私はノートパソコンを立ち上げ趣味の小説を執筆する。
ページをめくる音とキーボードを打つ音だけが室内に響く。
やがて友達が伸びをしている姿が目に入り、読み終わったのだなと察した。
でも私が口を開く前にまた友達は本を開きパラパラとめくる。
おそらく張り巡らされている伏線を回収する旅に出たのだろう。
まだしばらくかかりそうだなあと思うと同時にジュース絶対ぬるくなってるなあとも思う。
まあいいか。別に炭酸じゃないし。冷たいのが飲みたいなら氷を入れれば済む話だし。
そう考えながら私はパソコンに向き直るのだった。

9/2/2025, 1:44:20 PM