作家志望の高校生

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とにかく暇だった。成績は何もしなくても中の上くらい、友達は特にいない。打ち込めるような趣味も無く、かといって今更勉強に熱心に取り組むような気は起きない。
そんな単純で怠惰を極めたような理由から、俺は軽率に禁忌に手を出した。
きっかけは簡単なことだった。することもない休日、日が真上を通過するまで惰眠をむさぼっていた時。ふと目が覚めて、さっきまで見ていた夢が恋しくなった。
現実の、自分のよく知る自宅のような、けれど確実に違うどこかで、ふわふわとした何かと遊んでいる夢。何と遊んでいたのか、夢の中でも特に認識していなかった気がする。
柔らかく穏やかな、少し高揚した気持ち。段々目が覚めて記憶が薄れていくのが、何故か妙に勿体なく感じた。
それで、俺は目の前にあった適当なプリントの裏紙に、寝起きの崩れたふにゃふにゃの字で日記をつけた。
今読み返してみれば、読めたものではない。しかし、不思議と書いたあとはもう忘れなかった。
それからというもの、この習慣、所謂夢日記にハマった俺は、毎日のように日記をつけるようになった。初めは見るか見ないかもまちまちだった夢は毎晩見るようになり、次第に内容もよりリアルに、具体的になっていく。
やがて、それは現実と区別がつかなくなった。寧ろ、夢の方が、自分の思った通り、多少めちゃくちゃでも好きなようにできるのだ。俺は夢の世界に囚われて、現実との境目がどんどんぼやけていく。
それでも、夢日記はやめられなかった。あちらの世界、と今はまだ認識できている夢の中では、あのふわふわとした、柔らかな「友人」達が待っている。俺の好きな話しかしない、どれだけ話したって決して否定してこない。彼らは最高の親友となった。
またしばらく経って、いつも通り夢見心地で学校へ向かう。ここ最近は授業中に白昼夢を見るような時も増えた。もう、本当に、今自分がどちらの世界にいるか分からない。
珍しく、学校で僕に声をかけてくる者がいた。声の低さから、恐らく男。夢の中の友人とおなじ、柔らかく、ふわふわとした、可愛らしいテディベアの顔。
声も聞こえるかあやふやな中、僕のポケットから、ぱさりと小さなメモ帳が落ちた。
中身はミミズの這ったような文字らしき何かだけが幾重にも書き連ねられ、ヘラヘラ笑う僕は、目の前のテディベア、その下に隠された男子生徒の顔が、戦慄に強張っているのに気が付かなかった。

テーマ:閉ざされた日記

1/19/2026, 8:01:47 AM