川柳えむ

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 一目惚れだった。
 花に囲まれた君は大層美しかった。
 だから、君を手に入れたかった。
 君の為なら何でもできると思った。
 花が綻ぶように笑う君が見たかった。

 君は私を見て怯えたように言った。

「化け物」

 君は美しく笑う人で、いつも幸福でなければならなかった。
 そんな言葉を吐き出す君は、君じゃない。

 物言わぬ塊になっても、君は美しかった。
 そうして私は、ようやく君を手に入れた。


『愛する、それ故に』

10/8/2025, 10:32:37 PM