なつめぐ

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『終わりに向かう男』



コポ、と口から泡が溢れた。どうやら自分は海の中にいるみたいだ。体はどんどんと底へ底へと沈んでいっている。本来ならば焦らなきゃいけないはずなのに、何故だか自分は落ち着いていた。水の温度に合わせて体がどんどんと冷えていく。

……もう全てが終わった。念願だった、あいつの仇は打てた。あの組織を壊滅させることは出来なかったが…まぁそれはあいつがやってくれるだろう。あの、主人公のような輝かしい男が。もう俺の出番はお終いだ。


目を閉じようとしたその時、優しい声で名前を呼ばれた。聞き覚えにある声に目を見開くと、目の前にあいつが現れた。あいつは優しく微笑んで「ありがとう」と口を動かした。目頭が熱くなるのを感じ、ゆっくりと目を閉じる。そして、いつの間にか口癖になっていた言葉を零した。それはまたもや泡となったが、あいつに届いた気がした。



【海の底】

1/20/2026, 2:12:25 PM