ミミッキュ

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"風に乗って"

 今朝は風が少し強かった。
 花壇や道端に咲く花は揺れて、桜の花弁は舞い散る散歩道。
 風が吹く度に、花の良い香りが鼻腔をくすぐる。
 もう大丈夫だとエリザベスカラーを外し、運動を解禁したハナは、揺れるチューリップ、フリージア、名前は知らないが紫色の小さな花にじゃれたり、飛んでくる桜の花弁が舞う様を観察したりしている。
 桜吹雪の中を歩くハナはとても絵になる。
「楽しいか?」
「みゃあ」
 首を動かしてこちらを向き、弾む声色で鳴いた。
 尻尾が、ピン、と立っている。
 よく見ると、鼻がヒクヒク動いている。
 微笑ましくて、小さな笑いが漏れる。
 戯れる様子に、はたと気付く。
──『ハナ』に、春の『花』に、……『花』家。
 三つの『はな』が共演している事に気付き、恥ずかしさに顔を伏せる。耳が熱い。
「みゃあ」
 足に違和感を感じ、我に返って足を見るとハナが足に前足をかけて立っていた。
「なんだ、抱っこか?」
 両手でハナを持ち上げ、抱きかかえる。
──また重くなってる。
 ハナの成長に喜びを感じながら、ハナの頭を撫でる。
「もう少し歩くか?」
「みゃあ」
「じゃあいつもより少し遠くまで行くか」
「みゃあん」
 ハナの返事を聞き、いつもなら折り返して帰っているところを直進する。
「降りて歩くか?」
「みゃあ」
 ハナの返事を聞いてゆっくり地面に下ろしてやると、前足と後ろ足を弾ませて先を歩き始めた。
 再び微笑ましさに小さく笑いながら、ハナの後をついて行った。

4/29/2024, 12:46:17 PM