小説
おばみつ※最終決戦後
一筋の光が君の元へ差し込む。
まるでスポットライトのよう。光に照らされた髪の一本一本がキラキラと輝いた。
ふと、君が俺の視線に気がつく。ふわりと笑いこちらを向く彼女の姿は、天使と見間違えるほど美しかった。
「伊黒さん!」
鈴を転がすような声で俺を呼ぶ。
嗚呼、なんて愛しい、なんて可愛い。
世界一愛しくて可愛いあの子を俺は抱きしめた。
「…………いぐろ、さん」
はっと我に返る。目の前は、何も見えなくなっていた。腕の中には確かな重みと微かな温かさ。声は、その腕の中から発せられていた。
「……もう……ねむいわ…………」
息も絶え絶えに声を紡ぐ彼女を支えることが精一杯で、俺は彼女の頭を自らの胸元へ引き寄せる。
「…あぁ……あったかい…………あったかいなぁ…」
彼女の命はもう長くはないだろう。呼吸の音が、心臓の動きが、段々と弱く小さくなっていることに気がついた。
「大丈夫だ甘露寺。最期まで一緒だ」
「………………うん…………いぐろ…さん……」
「…どうした?」
「………………」
「……甘露寺?」
「………………」
辺りがしんと静まり返る。
最後の力を振り絞り、精一杯抱きしめる。二度と離さないように。
俺の見えなくなった目からは、とめどなく涙が溢れた。
意識が朦朧とし、自らもすぐに甘露寺の後を追うことが分かった。きっとあの子は待っててくれる。そうしたら一緒にいこう。あの鈴を転がすような声でまた名前を呼んでくれるだろうか。
_______今いくよ
一筋の光が、俺たちを優しく照らした。
11/5/2024, 1:36:07 PM