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夢を見てたい

「お兄様!!」愛らしく 可憐な声で
妹が僕の名を呼ぶ

一生懸命に僕の元へ駆けて来て
小さく無垢な手で ピンクの花輪を
僕に見せてくれる。

「お兄様の分!!」と木漏れ日の様な
笑顔を僕に見せ 花輪を僕の首に
掛けてくれる。

「ありがとう」僕は、顔を綻ばせ
妹に伝える。

此処は屋敷の中庭 此処には色とりどりの
花々が咲き誇り 僕と妹の憩いの場所として 小さい頃から二人の大切な居場所
だった。


この花園に居る限り僕と妹二人だけで
居られる

まるでいつまでも夢の中に居る様なそんな
甘美な時を感じられる。

いつまでも夢を見させてくれる。...

僕は、愛しげに妹の髪を撫で
今度は、僕が作った花冠を妹の頭に乗せる。

妹は、照れた様に頬を染め僕を
見上げる。
そしてまた 優しい笑顔を僕に
向けてくれる。

いつまでもこの夢の時間が続けば良いのに...

だけど....もうすぐ僕は、妹と離れて
暮らさなければならない。

位の高い貴族の家に養子に出される事が
決まったからだ....

これは決定事項 覆す事は許されない...

妹には、別の家で暮らす事が決まった事だけ伝えた。

妹は、最初わんわんと泣いた
我が儘を言わない妹がその時だけは、
(行かないで)と僕の胸の中で泣きじゃくった。

宥めて慰める事しか出来なかったけど
妹は、次の日には、聞き分け良く
僕に笑顔を向けてくれた。

そんな妹が愛おしくてたまらない...

「お兄様...」花冠を付けたまま妹が僕を
見上げる。
妹も分かっている...
別れの時が近づいている事を....
僕を見上げる妹を僕は、何も言わず
抱きしめた。

神様 出来る事なら まだ夢を見させて下さい

簡単には、覚めない夢を出来るだけ長く僕は見ていたいんだ...。

1/14/2024, 7:29:51 AM