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『太陽の下で』

疑問に感じたのは、彼はなぜ外に出たのだろうということだけだ。

そして、安全な家から外に出たこと以上に信じられなかったのは、彼の体がサラサラと灰となってしまったことでも、それと同時に自分の体もボロボロと崩れ始めていることでもなく、振り返った彼が幸せそうに微笑んでいたことだ。

あのままずっと、ふたりで悠久の時を超えていくのだと思っていた。
彼もそれを望んでいたのではなかったのか。

どうして……どうして……

最後に残った小指の爪が塵になる瞬間、遠い昔、まだふたりが普通の人間だった頃、こんなふうに太陽の下で彼がそっとそこに小さく口づけてくれたことを思い出した。



「チーフ、また失敗です。サンプルМが破滅的自傷行為により消滅、それを追いかけたサンプルWも消滅しました」
「またか。どうにもオスの個体は不安定になるな。あの恒星の光と熱に体を晒すようでは、我々の寄生先として危険極まりない」
「どうしましょう。新たなサンプルを用意しますか?」
「いや、もういいだろう。この星はあの恒星に近過ぎる。もう少し先の惑星でサンプルを探そう」

11/25/2024, 2:33:06 PM