KAORU

Open App

 太りづらい体質のシュウが、頑張って頑張って食べて体重を増やしてでっぷり重くなったのとは対照的に、小さい頃からふっくらテプテプしていたレンがダイエットを強行。
 努力が実り、スラリとスレンダーなスタイルに変貌した。
 痩せたらすんごくきれいになる、そんな典型的な子だったんだ。レンは。

 
 学校いちのモテ男だったシュウの周りからは、女の子が水が引いたようにいなくなり、代わってレンに男子が群がり始めた。
 でもレンは、袖にするばかり。相手にしない。
 なんで?もったいない、よりどりみどりなのに、と友達が口を揃えて言うものの、フン、と鼻を鳴らすだけ。
「あたしの見かけだけ見て、好きだなんだって騒いでる連中にキョーミない。どうせまた太ったら、目もくれなくなるんだよきっと」
 昼休み。屋上でランチタイムに入っていたレンが口にすると、
「レンちゃんのそーゆーとこ、好きだっ」
 物陰から急に現れたのはシュウ。ボイーンと豊満になったボディを持て余し気味にレンに近寄る。
「わ、びっくりしたあ」
「約束通り僕、太ったよ! 付き合ってよレンちゃん」
「シュウくんはいくらなんでも太りすぎだよー。身体に悪いから少し絞ったら?」
「他の子みたいに、痩せて元に戻って、元のルックスがいいとか、言わないんだね」
「まあ別に。中身はシュウくんだから同じでしょ。変わんないよ」
 シュウはニコッと笑った。そして、
「……ねえレンちゃん、踊らない?」
と誘った。
「え。何急に、突然」
「ほら、放送で流れてくる曲。昔、小学校の時踊ったフォークダンスの曲だよ。男女で輪になって踊って、レンちゃんと手を繋いで踊れる、と思った矢先、曲が終わっちゃって、すんごくがっかりしたんだよー」
 レンは呆れ顔をした。
「よく憶えてるね、そんな前のこと」
「そりゃあ、ね」
 ふくよかな顎をたわんと揺らして、得意げにシュウはウインク。
「踊ろう、レンちゃん」
 太っても痩せても、お互いスタンスが全然変わらない二人って、そういないと思わない?
 特別なんだよ、僕らはやっぱり。
 だから踊ろう。恋愛っていうダンスフロアで、手を繋いでさ。
 シュウはレンに手を差し出す。恭しく。
 レンはしょうがないなぁと笑顔になって、「一曲だけだよ?」とその手に手を重ねた。

#踊りませんか
 「秋恋3」

10/4/2024, 11:03:50 AM