君はこんな経験があるだろうか?
家でのんびり寛いでいる時、用事を思い出して立ち上がったがいいが、その瞬間忘れてしまった経験。
休日街を歩いている時、知り合いに会ったが、名前を全く思い出せない経験。
トイレに言った後、スマホをどこに置いたか分からなくなる経験。
今日が何曜日なのか忘れてしまった経験……
それらの原因は『加齢が原因の物忘れ』と信じられているが真相は違う
それは海賊の所業。
記憶の海を股にかける大海賊ボウ・キヤックの仕業だ。
ボウ・キヤックは金銀財宝には一切興味を見せない。
ひたすら人間の思い出や記憶を奪い、悦に浸るのが彼の趣味なのだ。
ボウ・キヤックの手際は鮮やかだ。
記憶を盗まれてもすぐには気づけず、多くの人が盗まれたことにも気づかない。
彼の手際は、かの大怪盗ルパンにも匹敵する。
もしも君がジュースを飲みたくなったとしよう。
君はキッチンに行き、棚からお気に入りのマグカップを取り出すだろう。
そして、冷蔵庫から取り出してジュースをマグカップに注ぐ。
もしかしたら、おやつも一緒に用意するかもしれない。
これでようやく準備が整ったわけだが、ボウ・キヤックが暗躍するのはこの時だ。
彼は部下を使って君へと来客を装う。
あるいは不審な物音を立てるなど、君の注意を惹く。
君は来客や物音に対応するため、手に持っているマグカップをキッチンの流し台の上に置くだろう。
このとき、ボウ・キヤックが掠め取るのだ。
君の『ジュースを用意した』と言う記憶を……
そして、まんまとトラブルに対応させられた君は、ジュースの事など忘れ他の作業をし始める。
そしてジュースは、流し台の上に放置される。
気づいた時にはもう遅い。
ぬるくなったジュースが残されただけだ
なぜボウ・キヤックの正体は誰も知らない。
神出鬼没で、誰も姿を見た者すらいないからだ。
だが一つだけ分かっている事がある。
それは今も記憶を盗み続けていること。
ボウ・キヤックは自らの趣味のため、今日も記憶を集め続ける。
もし物音を聞いたら気をつけたほうがいい。
次に盗まれるは、君の記憶かもしれないのだから。
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「これが宿題を忘れた理由です、先生。
全ては海賊のせいなのです。
自分は悪くありません」
「それは災難だったな。
だが安心するといい。
そんな事もあるかと思って、補習の準備をしてあるから」
6/20/2025, 1:26:09 PM