G14(3日に一度更新)

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 君はこんな経験があるだろうか?

 家でのんびり寛いでいる時、用事を思い出して立ち上がったがいいが、その瞬間忘れてしまった経験。
 休日街を歩いている時、知り合いに会ったが、名前を全く思い出せない経験。
 トイレに言った後、スマホをどこに置いたか分からなくなる経験。
 今日が何曜日なのか忘れてしまった経験……

 それらの原因は『加齢が原因の物忘れ』と信じられているが真相は違う
 それは海賊の所業。
 記憶の海を股にかける大海賊ボウ・キヤックの仕業だ。

 ボウ・キヤックは金銀財宝には一切興味を見せない。
 ひたすら人間の思い出や記憶を奪い、悦に浸るのが彼の趣味なのだ。

 ボウ・キヤックの手際は鮮やかだ。
 記憶を盗まれてもすぐには気づけず、多くの人が盗まれたことにも気づかない。
 彼の手際は、かの大怪盗ルパンにも匹敵する。

 もしも君がジュースを飲みたくなったとしよう。
 君はキッチンに行き、棚からお気に入りのマグカップを取り出すだろう。
 そして、冷蔵庫から取り出してジュースをマグカップに注ぐ。
 もしかしたら、おやつも一緒に用意するかもしれない。
 これでようやく準備が整ったわけだが、ボウ・キヤックが暗躍するのはこの時だ。

 彼は部下を使って君へと来客を装う。
 あるいは不審な物音を立てるなど、君の注意を惹く。
 君は来客や物音に対応するため、手に持っているマグカップをキッチンの流し台の上に置くだろう。

 このとき、ボウ・キヤックが掠め取るのだ。
 君の『ジュースを用意した』と言う記憶を……

 そして、まんまとトラブルに対応させられた君は、ジュースの事など忘れ他の作業をし始める。
 そしてジュースは、流し台の上に放置される。
 気づいた時にはもう遅い。
 ぬるくなったジュースが残されただけだ

 なぜボウ・キヤックの正体は誰も知らない。
 神出鬼没で、誰も姿を見た者すらいないからだ。

 だが一つだけ分かっている事がある。
 それは今も記憶を盗み続けていること。
 ボウ・キヤックは自らの趣味のため、今日も記憶を集め続ける。

 もし物音を聞いたら気をつけたほうがいい。
 次に盗まれるは、君の記憶かもしれないのだから。

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「これが宿題を忘れた理由です、先生。
 全ては海賊のせいなのです。
 自分は悪くありません」
「それは災難だったな。
 だが安心するといい。
 そんな事もあるかと思って、補習の準備をしてあるから」

6/20/2025, 1:26:09 PM