田中 うろこ

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静かなる森へ、足を踏み入れる。足音は子気味よく進む。草むらをかき分けて、獣道をずかずか進む。こんなに木々が生い茂っているのに、下を向けば足跡があるのに、不思議と生き物の気配がひとつもしない。それは何故か。理由なんてない。
歌を歌おう。ステップを踏もう。思い切り笑って思い切りふかふかの草むらに背面から飛び込んでしまおう。思い切り青いそこに倒れ込むと、つゆが顔に落ちる。冷たい水滴が心地良かった。こんなに楽しいひとりぼっちは初めてだ。いつの間にか気分は舞踏会。

僕は今日、樹海で自殺を試みた。

上を見上げても、嫌になるほど日が射さない。ただただ木々が僕を見下ろしている。平衡感覚がなくなってくる。散々踊ってくるくる回ったものだから、北も南もわからない。もう外に出られなくなってしまったのだ。パーカーのポケットにも何も入っていない。着の身着のまま森に来た。カバンも何も持っていない。僕はこのままここで死ぬ。なんだか眠たくなってきた。寝ればこの世からにげられるだろうか。安らかに目を瞑る。

「……………夢か。」

5/10/2025, 10:39:50 AM