「今どきそんなベタなことしない」
彼女が髪をかき上げた。
ふぅ、と息を吐いて、俺の耳に唇を近づけてくる。
あぁ、早くしてくれ。
そして、彼女はそっと囁く──
「こ・た・つ」
「って、おおおおい!」
俺は彼女から距離を取った。
「え、ダメだった?」
「今どき、漫才でもそんなベタなこと言わねーぞ!」
「じゃあ『ゆたんぽ』?」
「暖房用品の名称だろうが!」
『あたたかい言葉をかけてくれ』と、こいつにお願いした俺がバカだった。
くそぅ。耳が熱い。
まだ耳たぶが彼女の吐息を覚えてる。
────そっと
1/15/2025, 7:42:40 AM