300字小説
アナタに捧げるハッピーエンド
春の空に教会の鐘が鳴り響く。
「ハッピーエンドってやつだな」
魔王を倒した勇者パーティの、勇者はこの国の姫と結婚、戦士は将軍に、魔法使いは魔法協会の会長、僧侶は大僧正になる。皆、地位も財産も得て順風満帆の人生を歩む。……たった一人を除いては。
魔王城に橋を掛ける為に進んで人柱になった巫女。罠を解除する為に雇われた盗賊の俺にも優しくしてくれた。その形見の髪飾りを陽にかざす。
『私の故郷に咲く花を模したものなの』
今頃、彼女の村は薄いピンクの花に覆われている。その村の彼女の縁の人に渡し、花の下に葬ってあげよう。
「アンタもハッピーエンドを迎えないとな」
俺は髪飾りを大切に懐にしまうと、東に向かって歩き出した。
お題「ハッピーエンド」
3/29/2024, 12:40:34 PM