袋野ねずみ

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※信号関係ないです!!すいません!!!




独白



誰かに見られることなんていうことはないと思うので、これには独白と名前をつけさせて頂きます。

私はもう老い先が短く、いつ何があってもおかしくない身です。

もちろん歳も歳ですが、
それよりもっと老い先の短さの理由を占めるのは、私の病気でしょう。

産まれた時からもう治ることは無いだろうと言われた病気でした。

寿命が人より短い。

それになんの実感もわかず恐怖もなく、
なのにどうせいつ消えるか分からない命だと。

弱い体を引きずり卑屈に生きてきました。

そんな事を続けて、40年が経った時でした。

私が彼女に出会ったのは。

母国の内外に限らず世界中を旅する彼女は、私の半分ほどしか生きてきていないというのに沢山の視点と、そして知識を持ち合わせておりとても遠くのところ、ましてや国外なんて出られやしない私は、彼女が話してくれるお話の中のような現実のストーリーを子供のように熱中して聴いていました。

彼女は不定期に何年も色々なところを飛び回っていますから、会える時はとても少なかったのです。

ですが一区切り着くと必ず私のところに来て、また新しい話を聞かせてくれるのです。

そんな優しい彼女に私は劣情を抱いてしまった。

無論伝える気なんてありません。
老い先も短く歳をとったこんな私が、未来ある優しい彼女に余計なことを言い足を引きずらせることはできませんから。

──なんて、ことを言い訳にしてはいますが、きっと私がそばにいて欲しいと、横で話をもっと聴かせてくれなんて言えば、優しい彼女は迷わず飛び回るのをやめ私の横に居てくれるのでしょう。

でもそんなことは許されない。他でもない私が許さない。

私は世界中を飛び回って、嬉しそうに元気に帰ってくる彼女を、きらきらして絶望なんて写したことがなさそうな瞳で語ってくれる彼女を愛していたのですから。

この短い先、二度と口に出すことの無いこの思いをこの文に残し、私はずっと彼女を待ちます。


この文の入った瓶を拾ったかもしれないどこかの誰かへ。





海が見えた。

世界を飛び回っていれば珍しいものでもないけれど、わたしはいつも海が見えると飛び込みそうになってしまう。

色んなところと繋がっている海は、きっと大好きなあの人にも繋がっているから。

今度はどんな話を持って帰ろうかななんて思いながら砂浜に近づく。

ふと、小さな小瓶が目に入った。

コルクを留めている真っ赤なシーリングの模様に、見覚えがあった。

急いで開けて中身を確認したわたしは、次の瞬間急いでスマホを操作し帰りの飛行機をとった。


独白。

9/6/2025, 9:35:26 AM