・衣替え
店のドアが開く。顔をあげるといつもと雰囲気の違う彼女がそこに居た。
目を凝らして見ていると少し不安そうな表情を浮かべて身構えられてしまった。
「アタシ、また何かしました……!?」
「いや。いつもと雰囲気が違うと思ってただけだ」
「えぇ?なんでしょう、特に何か変わった訳じゃ……あ!」
突如、両腕を広げる彼女。
「多分これですよ!ほら、カーディガン!」
「カーディガン……ああ。そうか。もうそんな時期か」
「そうですよ!すっかり秋になっちゃいましたもん」
衣替えした彼女を見つめ、すぎた季節を振り返る。
彼女と出会ってからもうこんなに過ごしたのかと思うと感慨深い。
「あのぉ……本当に私何もしてないんですよね……?」
「今回はしていない。それより早くお店の支度を頼む」
「あ、そうだった……!!」
忙しなく動く彼女を見守り、今日も来てくれた平穏に心の中で小さく安堵するのだった。
10/22/2024, 11:51:42 AM