私、貴方の歌好きよ。君は興奮で汗ばむ額を先程までピアノを弾き鳴らしていた指で拭いながらそう言った。君は音楽に愛されたような人で、楽器を渡せば自由自在に弾き鳴らし歌を歌わせれば周りに感動の嵐をもたらす。それに比べ私は何をしても凡以下で唯一好きと言える歌でさえ、満足に歌えないのだ。そんな私を君はステージへと連れ出し、広い世界を見せた。君が弾く曲は時に情熱的で恋に焦がれる恋歌、時に陽気で鼓舞されるような応援歌、時に憂いの帯びた哀歌。それに合わせて歌う私の歌はそれらの曲を褒め称える賛美歌のような錯覚に陥る。君の奏でる音楽に君と私の全てを乗せ、誰もを魅了してく。君が好きだと言ってれたこの歌はきっとこのためだけにあるのだ。私は君だけにこの歌を捧げる。君の奏でる音楽には私の歌が必要なのだから。
#君の奏でる音楽
8/12/2024, 12:49:50 PM