透き通る幹、紅く色づく葉。
ガラスでできた大樹───『世界樹』に向かって、彼は今日も問いかける。
我が主よ、何故私をお創りになったのですか。
彼は世界樹の管理人。
しかし、この世界は遥か昔に創造主が定めた終わりに向かって、今日も静かに進んでいる。
世界樹のあるこの場所には誰も入ってこられない。
管理人の仕事などあってないようなものだ。
独りきりの世界というものは思いのほか退屈である。
彼にできることは、葉をつけては落とすことを繰り返す樹を、ただ見守ることだけ。
ここには何もない。彼と樹以外、何も───
「うわっ!?な、なんだここ……」
不意に誰かの声がした。
(にん、げん?)
初めて直接見る『人間』に、彼の好奇心が疼く。
気がつけば、人間に向かって歩き始めていた。
これも、主が仕組んだことなのだろうか?
そうであってもなくてもいいと思った。
そして彼は、混乱した様子の人間に話しかけた。
「こんにちは。君は人間だね、どこから来たの?」
10/26/2025, 11:19:29 PM