「はじめまして、私の名前は田中隼人です。好きなことはサッカーで、嫌いなことは勉強です。好きな歌手?は普段あんまり音楽を聞かないので分かりませんが、yoasobiとかは好きだと思います。1年間よろしくお願いします」
「はじめまして、田邊美香です。好きなことはライブに行くことで、良くあいみょんのライブに行ってます。嫌いなことは運動です。好きな歌手はもちろんあいみょんです!よろしくお願いします!」
順々にクラスメイトの自己紹介が行われているが、とても冗長で退屈だ。そもそも僕はこのクラスで人と仲良くするつもりは無いし、学校に通うかすらも決めかねている。残念だが、クラスメイトの名前を覚えるくらいなら、カラマーゾフの兄弟の相関図を覚えたい。おっと、そろそろ僕の番だ。
「どうも、真鍋学だ。好きなことは本を読むことで、嫌いなことは人と話すことだ。音楽はドヴォルザーク、ブラームスかな。仲良くする気はないので、僕のことは居ないものとして扱ってくれ」
久しぶりに読んだ本がここまで粗末だと、やはり本の選別には一定の時間と労力を注ぎ込むべきだと分かる。僕は別にジャンルによって好き嫌いがある訳でもないし、そこに優劣をつけるつもりも毛頭ない。ただ、1つの作品としての造りや調子を見ているに過ぎないんだ。こういう、青年期特有の自意識の強さだったり、さもしい自己顕示欲はある意味では健全だし、それ自体はむしろ作品に深みを与える。しかし、やはり大事なのはそれをどう表すかであり、どう伝えるかなのだ。もっと奥ゆかしさがある、侘しい雰囲気ややり取りがあれば、全体としてはもっといいテンポになるはずだ。
まあしかし、こう批判しているだけでは説得力というものが無いな。例えば僕ならこう書く
「はじめまして……」
4/1/2025, 4:04:09 PM