石造りの暗くて冷たい部屋。必要最低限の家具。唯一外との繋がりを感じる小さな窓には、空を裂くように縦に三つ、鉄の棒。
私は、四つに切られた長方形のケーキみたいな、小さい空しか知らなかった。あの時までは。
「どうしたの?」
空が隠れて、代わりに君の手が鉄格子の隙間から伸びてきた。一緒に出ようよ、と私に向かって笑う。
「出られないの。出られないのよ」
「そんなに言うなら、助けてあげる。ちょっと待っててよ」
君は一度離れると、窓と同じくらいの石を抱えて戻ってきた。そうして、鉄格子に何度も、何度も石をぶつけた。いくら頑張っても壊れたりはしないのに。
ガツン、ガツン、ガツン。何日も何日もその音が続いて、ついにある日、鉄格子は壊れた。
「さあ、今なら出られるよ!」
君は私を部屋の外へと連れ出してくれた。今でもあの時のことは覚えている。
草木の匂いと温かい日差し。そして、窓枠なんかには収まらない、広く青い空が広がっていたことを。
12/21/2023, 3:05:32 PM