1つ前の、きっと明日も。と、たそがれ。です。
よろしくお願いしますm(_ _)m
きっと明日も
「何か楽しいことないかなぁ」
毎日同じようなことの繰り返しで、退屈なんだよね。
と、読んでいた本をパタンと閉じて、キミは言う。
「イヤなことがないなら、それでいいんじゃない?」
そう言った俺に
「そうなんだけどさぁ」
キミは苦笑いする。
「毎日がさ、読んでる本のストーリーみたいだったら、どうする?」
俺の問いにキミは少し考え
「…読むだけでいいわ」
ゲッソリした顔になる。
「まあ、そうだよね」
読んでいるのは、殺人鬼に追われるストーリー。毎日生きた心地がしないだろう。
「読んでる内容によっては、本の中の方がいいのかもしれないけど、本の世界は、なかなか自分が体験できないことの方が多いだろうからね」
「そうだね」
「だからさ」
俺はニコッと微笑み
「何か楽しいことないかな?って言えることが、幸せなんだと思うよ」
きっと明日も、同じようなことの繰り返し。
だけどそれが幸せなんだと、思うのだった。
たそがれ
太陽が一日の役目を終えた、たそがれ時。
薄暗い中、路地裏の壁に寄りかかってタバコを吸っていると
「何してんの?」
と、声をかけられる。
「見りゃわかんだろ。タバコ吸ってんだよ」
声をかけてきた隣人に返事をすると
「大変だね」
と、苦笑される。
「まあ、仕方ねえよ。タバコやめらんねえし、部屋で吸うと臭いがつくからな」
吸った煙を空に吐き出すと
「大家さんに怒られそうだよね」
煙は暗闇に溶けていく。
「いつもここで吸ってるの?」
あまり話す機会のない隣人。
「…そうだけど、何で?」
何でそんなことを?と不思議に思っていると
「タバコ吸ってるときに、見かけたらまた話したいなって。一人暮らしであまり話せる友達もいないし、邪魔じゃなければ…」
たそがれが似合いそうな、少し淋しそうな顔で言われる。
「構わねえよ。吸う時間は決まってねえけど、時間決めんのか?」
もしくは連絡先の交換?吸いに行くときに声をかける?と考えていると
「ありがとう。タバコを吸ってるのが見えたら来るね」
隣人は嬉しそうに笑う。
「…吸ってるのが見えるのか?」
タバコを吸う時間は、だいたいいつも今くらい。人の姿は見えないんじゃ…。
「見えるよ、タバコの赤い火がね」
隣人はそう言ってニッと笑う。
「わかった。じゃ、また会ったらな」
「うん」
なるほど、そういうことか。
隣人の言葉に納得し、タバコを吸い終え、隣人と一緒に部屋に戻ったのだった。
10/2/2024, 9:40:47 AM