たると

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部活が終わった後の帰り道を自転車で走っている。
肌を刺すような寒さに身を震わせながら、家に向かって無心でペダルを漕ぐ。
特に雪深い我が故郷は、11月も後半になると既に真冬のような寒さになる。手は悴んで、ほとんど感覚がない。手袋をしてくればよかったと朝家を出発してものの数十秒で後悔したことを思いだす。
しかし帰るためにはペダルを漕がなければいけない。疲れた身体に鞭を打って、ひたすら前へ前へと進んでいく。
暗くなった田舎道に人影はなく、世界の終わりのように静まり返っている。
無心でいようといつつも、ついつい考えてしまう。

授業中に教師に当てられて答えられなくて恥をかいたこと。
友人に言われた何気ない一言に傷ついたこと。
部活での調子がイマイチだったこと。
なんとなく1日頭が重たかったこと。

人に話すほどではない、そんなモヤモヤとした事柄を思い出す。
あぁ、嫌だな。気持ちが暗くなる。
ストレスというほどのものではなく、生きていれば当たり前に起こるそんな些細なモヤモヤは、雪のように心に降り積もって、いつしか動けなくなるような気がして、とても怖い。

どうすればいいのか。

子供の自分の頭ではいくら考えても最良の答えなんて見つからず。両親に相談したとしても軽く流されてしまうような、そんなことで悩む自分にも嫌になって。嫌になって。落ち込んで俯いてしまいそうになって、無理矢理顔を上に向けて空を見た。



星明かり。



空に一番星が輝いていた。
星を見つけたからといって、自分の今のこの気持ちが解消されるわけなんてない。そんなのわかっている。
ただ、この星明かりを、自分以外の誰かも見上げている。もしかしたらその人は、自分よりも辛くて、苦しくて、死にたいような、そんな状況の人たちかもしれない。そんな人々にも平等に夜は訪れて、そして朝がやってくる。そんな当たり前のことに、少し救われたような心地になる。なんでなのかはわからない。人の心は複雑なのだ。特に子供の心は。

帰ろう。

先ほどよりも強くペダルを漕ぐ。冬の空気を感じながら、今日の夕飯は何かに思いを馳せる。
ほらね、僕はこうして生きている。あなたもそうやって、生きている。

4/21/2025, 7:20:12 AM