美坂イリス

Open App

 遠く、遠く。いつか夢見た、空の彼方まで。

「……よし」
 薄いフィルムで隔てられたキャノピーの中、私は頷いて親指を上げる。さあ、行くよ。
 モーターの回転数が上がって行くにつれて、プロペラの音も高く鳴り響いていく。
「……飛べ……」
 ゆっくりと、機体が進み始める。
「……飛べ」
 風を捕まえた翼が、機体を、私を押し上げていく。
「……飛べ!」
 そして、幼い頃に夢見た青く輝く空へと、翼は、機体は、私は飛び立つ。気付けば、私の頬を涙が一筋伝っていた。

 そうだ、やっと私はここに来れたんだ。

7/20/2025, 4:18:55 AM