「子供のままで」
子供の頃の夢はなんだっただろう。
ヒーローだったか、はたまた花屋でもしたかったのか。今となってはよく思い出せない。後ろを振り返れば、血塗れの道だった。暗くて付き纏う。飲み込まれそうなほど深く作られていったその道。
“他人に誇れるような人生なぞ、歩めなかった”
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そう言い終わると、彼は椅子に腰をかける私に背を向けて寝てしまった。
不躾だったか。後悔しても遅いが、そう考えてしまうのは必然だろう。彼は、いつもは堂々としていてリーダーシップがあり、王そのものの在り方なのに、どうしてか極稀にこういう卑屈な部分が出てくるのだった。
「…子供のままでいれば辛い思いも、痛い思いもしなくて済んだのに。」
そう心の中で思ってしまった。
5/12/2024, 12:42:46 PM