すべて物語のつもりです

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 繊細な花の花弁を一枚ちぎって、乱暴なわたしになったつもりでいる。
 もう一枚、もう一枚と繰り返すうちに、花弁はすべて床にはらりと舞い落ちて、手に持つ花に見えないそれは丸裸になっていた。
 少し前のわたしには、こんなことできなかった。花の痛みを考えて、とかそこに至る前に、まず花弁をちぎる行為を思いついたことがなかった。
 ねえ、こんなに図太くなっちゃったんだよ。
 丸裸の花と今のわたしを、過去になったわたしに見せれば、彼女はきっと顔を歪めたい衝動を堪えた不器用な笑顔を見せるだろう。
 今のわたしはそんな笑顔もしなくなった。
 いつだって、わたしの笑顔は完璧だ。ネガティブな感情を堪えていることが一目で分かる笑顔なんて、もうわたしの顔に二度と浮かばない。
 そう。そんな風になった。
 これはわたしが図太くなったんだろうか。
 それすらも分からない。
 繊細とか繊細じゃないとか、敏感とか鈍感とか。もうなにも分からなくなった。
 力を込めて立ち上がる。それだけで息が上がる。
 ひとりでいる時は、ひとつため息を吐くことすら疲れるようになった。
 白のカーペットで鮮明な色を失わないでいる花弁を踏みつけながら、目の先にあるゴミ箱へ歩いた。

6/25/2023, 10:36:56 AM